極私的フットボーラー列伝2


やっとフットボールの季節が始まった。リーズ・ユナイテッドが昨年と同じようにスタートダッシュしているので(このことが不安だが)地元新聞ヨークシャー・イヴニング・ポストとリーズのオフィシャルサイトを読むのが日課になっている。久保、香川、富安といった選手の話題が相変わらずサッカー関連のメディアを賑わせているが、繰り返すが、もうやめようよ。日本人サッカー選手の質が上がった?確かにそうだろう。でも、移籍金額は?実際のところは?そこを意識しないと本当のことはわからない。現在の日本ので自国持ち上げは(サッカーだけでなくすべてにわたって)かなり危険だと思っている。ソフトなナショナリズムはハードなそれに変わる。そんなことを考えながら、前に書いた列伝の第2弾を書くことにした。ぼくの脳内に刻まれたフットボーラーたちの話だ。前に5人まで紹介したので、6人目から。
No6:ロナウジーニョ
これはもうぼくだけでなく、誰もが歴史に残る選手だと思っているだろう。ぼくがロナウジーニョをピッチで見たのは3回しかないのだが、プレーはもちろんのこと、観客へのサービス精神にも感激した。3回のうちで一番だったのは、ずいぶん昔、セビージャでのこと。バルサとベティスの試合を息子と見にいった時のことだ。実は降雨によってピッチが水浸しになり、試合中となってしまったのだが、僕たちは安い席に長く座って、ひょっとしたら(雨は止んでいたので)試合があるのではと期待し待っていたのだ。そして諦めかけた時、ピッチの端にロナウジーニョが現れ、水の溜まったピッチにダイビングをし始めたのだ。そのパフォーマンスに残った観客は大拍手。本当に観客を楽しませようとする男なのだ。ネイマールとは大違い!愛されるわけだ。PSG時代もそうだった。負け試合なのにロナウジーニョだけが最後までピッチで観客に手を振ってくれた。サポーターを楽しませること、サポーターの側に立ってプレーと振る舞いをするのがロナウジーニョだったのだ。クラブやディスコが大好きなことと、フットボールはロナウジーニョにとって同じことなのかもしれないと思った。ぼくにとってはブラジル人で一番印象に残る選手だ。
No7:J.J.オコチャ
知る人ぞ知る(誰もが知る?)、華麗なステップで中盤を支配するナイジェリア出身の不世出のMF。あのカヌー擁するナイジェリアの「スパーイーグル」(アトランタオリンピックで優勝)の要だった。ぼくが直接見たのは、 PSG時代の1998年から、プレミアのボルトンで活躍した2002−3年頃のオコチャである。1991年からのフランクフルトやトルコ、晩年の中東時代は知らない。ともかく、PSG時代のオコチャには魅了された。何度かパルク・デ・プランスに足を運んだのもオコチャを見るためだった。「華麗なステップ」と書いたが、それだけではわからない。YouTubeにはそうした映像も残っている。ボルトンの全盛時代にも、最後のハイバリーでのアーセナル戦でオコチャを見た。ボルトンの全盛時代だったのかもしれない。気さくな人だった。試合前の体ほぐしの短い時間に、オコチャはアップを止めて、ファンへのサインのためにピッチサイドまでやってくる。息子はもらえなかったが。愛されるパリでもボルトンでも愛されていることがわかった。そして、あのプレー。ぼくの伝説のフットボーラーである。だから甥のイオヴィも応援している。エヴァートンで叔父さんを見習って、フットボールを楽しんでほしい。現在オコチャはナイジェリアで、不動産から車やワインを輸入業などなどを行う複合企業のCEOとして有名らしい。実業家への転身。あの自由自在なドリブルで過酷なビシネス世界を駆けているのだろう。
No8:ヴァレロン(ファン・カルロス)
デポルティーボ・ラコルーニャの伝説のMF。実際の試合は見たことがないが、テレビの映像から伝わってくる、ヴァレロンの柔らかなステップと動き、そして、そのパスセンスに驚いていた。リケルメ全盛機に劣らない。加えて、伝わってくるその人柄。闘技であるフットボールと人格は必ずしもマッチしないこともあるが、やっぱり「いいやつ」であることは重要ではないか。英語版ウィキには、非常に敬虔な人間だと書かれている。きっとそうなのだろう。デポルティーボの全盛時代は、名監督ハビエル・イルレタに率いられ、ヨーロッパでも一目置かれていた。ヴァレロンの活躍はそこから始まった。21世紀初頭のデポルティーボでのヴァレロンは欧州でも3本の指に入るMFだったのではないか。魚が美味しいラコルーニャのスタジアムに行けなかったことが悔やまれる。引退後は生まれ故郷のラス・パルマス(カナリア諸島)に戻り、島のフットボール発展のために活躍しているという。鹿島の柴崎が入団した時は嬉しなり、ヴァレロンと友達になって欲しかったが、やっぱり彼は「サッカー選手」だった。

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